2016年5月 1日 (日曜日)

塔2016年4、3月号掲載歌

塔2016年4月号掲載歌

<作品2>江戸 雪氏選

・ペンダントヘッドの小さき海亀は鎖を千切り大き海へと

・笑わずに笑い袋を売らんとす「さよなら、人類」席にまどろむ

・北側の更地に家の建つという五月のことを母は気にする

・仲良しのご近所さんや建築士の従妹も来たり詩吟を唸る

・サネカヅラの赤き実わたし境界を確かめるため脚立に乗りぬ


塔2016年3月号掲載歌

<作品2>前田 康子氏選

・盗みたる鶏とらえたる魚を焼き森から森へ少年の生く

・ユダヤ人故に手術の遅れたり腕一本の少年荒れる

・菊花酢の歯に弾みおり懐かしき香りのありて父はいまさず

・富士山の見えぬ座席に折り畳み式の杖など見せてもらいぬ

・二から一やはり一とて糖尿という病なり娘の婿の

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2016年3月 9日 (水曜日)

塔2016年2、1月号 2015年12月号掲載歌

塔2016年2月号掲載歌

<作品2>山下 洋氏選

・目尻より口の端より赤き血をしたたらせたる二人と隣る

・CATSにて見覚えのある猫二匹二本の足で立ちて語らう

・右膝の後ろ右胸下あたり疼く霜月口角上げる

・血圧の高き母には禁物のローズマリーに励まされおり

12月号 永田淳氏選歌欄評 池田行謙氏 にて
・泣きそうな気持ちのままに向かい合う強そうなわれ鏡の中の
を取り上げていただきました。ありがとうございます。


塔2016年1月号掲載歌

<作品2>栗木 京子氏選

・華やかな水族館の裏側に浄水管のあまた行き来す

・深大寺の人をもてなす蕎麦屋には枡酒を酌む人のちらほら

・深大寺に妹と蕎麦味わいて大吉をひく二人とも引く

・学生のころ混声に歌いたる「流浪の民」を女声に歌う

・歌いたい歌をできれば歌いたい一輪ひらく一人カラオケ


塔2015年12月号掲載歌

<作品2>永田 淳氏選

・ふうわりとおさなきころへもどりおりオシロイバナの青き香を吸う

・泣きそうな気持ちのままに向かい合う強そうなわれ鏡の中の

・制服のサロンケバヤのミニサイズまといてシンガポールゆ来たり

・体力の温存のため眠りますやるべきことは小さく丸め

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2015年11月19日 (木曜日)

塔2015年11月号掲載歌

<作品2>三井 修氏選

・小銭入れは一円五円十円を孕みしままに姿くらます

・大戸屋に席なく隣る居酒屋のわれら十四名を吸いこむ

・お隣の煙草屋さんに焼きそばを振る舞われしを今も喜ぶ

・お姉さんは大柄な人眼鏡かけ小学生の我へ笑まいき

・お隣も三人姉妹おじさんは妾宅にいたことを今聴く

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塔2015年10月号掲載歌

<作品2>花山 多佳子氏選

・岩苔さん花茂さんとう母と吾のその日出会いし人の姓なり

・ただひとひ検査入院した母の不在に父の不機嫌に遭う

・その席はお母さんの席 らしからぬ父の指摘にお尻を浮かす

・いっぱいになるまで母は回さない洗濯槽を指差す父よ

・母かえる渋面は溶けたちまちにいつもの父の笑顔あらわる

・ははそはの母をわたしは箸を持ち鍋に泳がす豚とレタスを

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塔2015年9月号掲載歌

<作品2>永田 和宏氏選

・麦飯と糠漬けありて満ち足りぬ三十回を唱えて食むも

・われのあと音を立てずにカゴもどす殿方のありいつもの我ぞ

・カウンセラーと名乗る人とて生身なりもう潮時か幾度も思う

・一階に豆のサラダを購えば皿とフォークを添えて二階へ

・焼き鳥の煙のぼうと吐き出され赤きネオンに照らしだされる

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