2016年11月26日 (土曜日)

塔2016年11月号掲載歌

<作品2>栗木 京子氏選

・食べるのは遅い方なりゆっくりと歩み話せば呼吸も深い

・東京都合唱祭の夜の部の若きらの間に緊張しおり

・東鶴とう酒の名の合唱団おのこばかりのこくときれよし

・歩みだしそうな鶴など裾に飼う留袖の祖母お転婆なりき

・尋ねれば関西弁の返りきて我も関西弁にて返す

四首目を編集後記にて取り上げていただきました。
ありがとうございます。

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塔2016年10月号掲載歌

<作品2>前田 康子氏選

・朝顔の苗二つほどこしらえて門前に置くお持ちください

・持ち帰る袋も添えし母の苗翌朝となり苗のみ消える

・早朝のトイレに母と遭遇す母もわたしも生きております

・一晩に水を吸い上げ茎のみのローズマリーは庭に立ちおり

・ぽっこりとおなかの丸く背も丸い母に代わりてズボンを試す
 
・胃ろうなる義母の大腿骨折れてどうしたものか夫の惑う

・赤き色映えしローストビーフなり父の亡きあと熟練したり

七首目を編集後記にて取り上げていただきました。
ありがとうございます。

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2016年9月14日 (水曜日)

塔2016年9月号掲載歌

<作品2>永田 淳氏選

・球根を掘り出しみれば痩せている葉のみに消えしチューリップなり

・一輪だけ咲きし画像をカードにす咲き乱れてはつまらぬバラよ

・抜け殻を取りおく人と言われたり服用中は捨てられずおり

・医師も吾もマスクしたまま語り合う春咲く月見草に声なし

・パッキンはユニットバスの肉体の一部にありき海越え届く

・パソコンへアップグレード迫りくるカウントダウン枇杷の実たわわ
 
・失いてにわかに寂しヌイグルミはりねずみから蛙に変える

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塔2016年8~5月号掲載歌

塔2016年8月号掲載歌

<作品2>池本 一郎氏選

・葉の間に小さき青梅あまた見ゆ やはり梅なり桃にはあらず

・面接でなくハイキング バーベキューあり とある企業の企み楽し

・初めてのアデノウィルスに攻められて熱の上がるよ銀杏は若葉

・テヘランにアメーバ赤痢患えば風土病とて投薬のなし

・八度だいは薬の効きてよく朝に六度なれども嗅覚失せぬ


塔2016年7月号掲載歌

<作品2>真中 朋久氏選

・この闇に下高井戸の闇におり今日のシネマは悪夢なりけり

・複雑な鍵にてコピーではなくて番号に添い新たに生まる

・植木鉢の窪みの下へ隠したり人に預ける習いのありき

・葉桜の葉のみとなりて天井ゆ滴受けつつ蒸されておりぬ

・名も知らぬ人に紛れて湯浴みする流れ流れよ新緑の憂さ


塔2016年6月号掲載歌

<作品2>三井 修氏選

・煙突の消えて久しき白山湯行かずじまいの最寄りの湯なり

・初めての岩盤浴はうつ伏してまた仰向きに汗の滴る

・身近にもテレビにも見ぬ煙草吸う人あまたおり映画を見れば

・新婚の素朴なる家具好む吾へ華麗なる家具送りし義母よ


塔2016年5月号掲載歌

<作品2>小林 幸子氏選

・縦長の箱型したるカメラなり見上げるように人を捉える

・二眼レフを上から覗きこみながらマイヤーの獲る路上の人ら

・山芋は山のうなぎというと知りそばはとろろと決めて食みおり

・こんにゃくを芋から作る話など成田にて聴く娘の舅より

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2016年5月 1日 (日曜日)

塔2016年4、3月号掲載歌

塔2016年4月号掲載歌

<作品2>江戸 雪氏選

・ペンダントヘッドの小さき海亀は鎖を千切り大き海へと

・笑わずに笑い袋を売らんとす「さよなら、人類」席にまどろむ

・北側の更地に家の建つという五月のことを母は気にする

・仲良しのご近所さんや建築士の従妹も来たり詩吟を唸る

・サネカヅラの赤き実わたし境界を確かめるため脚立に乗りぬ


塔2016年3月号掲載歌

<作品2>前田 康子氏選

・盗みたる鶏とらえたる魚を焼き森から森へ少年の生く

・ユダヤ人故に手術の遅れたり腕一本の少年荒れる

・菊花酢の歯に弾みおり懐かしき香りのありて父はいまさず

・富士山の見えぬ座席に折り畳み式の杖など見せてもらいぬ

・二から一やはり一とて糖尿という病なり娘の婿の

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