私の好きな塔短歌0801<若葉集>花山多佳子氏 選より
[敬称略]
・正論で責め立てられた日の夕べシャポンの白い泡にくるまる(新井 蜜)
・名を呼ばれ自販機離れる二歳児の最後に少しさわりて行きぬ(奥野侑子)
・夕焼けの雲ことごとく掃き寄せて薄紅色のほうき草ねむる(相本絢子)
・魂に包帯を巻きほほ笑める人ありていま夕闇に消ゆ(角谷絵鈴)
・ストレスに弱き私は今日もまたニュースの途中でテレビを消しぬ(飯村みすず)
・雨の糸見上げる鷺は白拍子たしかな所作で一歩あゆめり(上原寿明)
・母の切りし薄きメロンの光膜を父の器に眺めていたり(宇梶晶子)
・ターバンをふんわり巻きてゐるごときトルコ桔梗の淡き花びら(江原幹子)
・窓を開け風に吹かれて力抜く揺れるたび散る萩の花びら(木村啓子)
・やうやくに子の眠りたる真夜開く絵本の母はみな嫋やかで(黒瀬圭子)
・磨ぎ汁を幾度もかえて思いおりわが子を橋より落とす瞬間(永田聖子)
・初めての宅配ピザを頼みけりどこか若やぐ二人の食卓(橋本水津子)
・たそがれの街に混じりて一つの灯守りつつ行く映画館出て(原 夏子)
・電子辞書ひらきて光を浴む媼魔法少女のコンパクトのごと(沼尻つた子)
・待つ人のなき清しさに時を遣る茶房の窓辺に夕日入るまで(磯部葉子)
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