私の好きな塔短歌0803<若葉集>真中朋久氏 選より
[敬称略]
・そこだけがくらがりになる中学生男子のおぼれるようなわらい声(上澄 眠)
・沈家門(シェンジアメン)の夜の屋台の賑はひに酔ひても醒めて聴く海潮音(畑 東秋)
・びろーどの豆割れて咲く枇杷の花薄黄の花の皆下を向く(相本絢子)
・冬の夜のアクアショップの一画に煌々として異国の蜥蜴(石井光子)
・落ち花のプロメリア一輪ひろひ上げ青年はそつと香りたしかむ(奥貫洋子)
・「握り飯あるぞ」の声に駆け寄れば陳列ケースにおから捏(つく)ねて(小山惇男)
・海原を漂う瓶の孤独さえ思わせる雨 私は一人だ(鈴木 聞)
・十五日に出して十六日に死にし母よりの年賀状元旦に来ぬ(田口朝子)
・山峡の線路の傍(わき)に墓四つ小さくまろき石乗せるあり(長谷仁子)
・夕暮れに落ち葉を踏みて歩むとき森はしずかに耳そばだてる(中村健治)
・青春に躓(つまず)かせたと思う子と世間話でただ帰る道(新倉由美子)
・栄養も老廃物も量られてチューブに頼る媼の暮らし(村木幸子)
・ただいまの声なく家に上がり来し子のまなざしに灯はなくて(吉沢ゆう子)
・路地裏に少女のピアフはフォルテシモ マイクなどなく名前などなく(今井由美子)
・エンドロール終(つい)までくだりて席を立つかなりガタンと戻る日常(宇梶晶子)
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