« 近況いろいろ | トップページ | エイプリルフールです »

2008年3月18日 (火曜日)

私の好きな塔短歌0803<若葉集>真中朋久氏 選より

[敬称略]
・そこだけがくらがりになる中学生男子のおぼれるようなわらい声(上澄 眠)

・沈家門(シェンジアメン)の夜の屋台の賑はひに酔ひても醒めて聴く海潮音(畑 東秋)

・びろーどの豆割れて咲く枇杷の花薄黄の花の皆下を向く(相本絢子)

・冬の夜のアクアショップの一画に煌々として異国の蜥蜴(石井光子)

・落ち花のプロメリア一輪ひろひ上げ青年はそつと香りたしかむ(奥貫洋子)

・「握り飯あるぞ」の声に駆け寄れば陳列ケースにおから捏(つく)ねて(小山惇男)

・海原を漂う瓶の孤独さえ思わせる雨 私は一人だ(鈴木 聞)

・十五日に出して十六日に死にし母よりの年賀状元旦に来ぬ(田口朝子)

・山峡の線路の傍(わき)に墓四つ小さくまろき石乗せるあり(長谷仁子)

・夕暮れに落ち葉を踏みて歩むとき森はしずかに耳そばだてる(中村健治)

・青春に躓(つまず)かせたと思う子と世間話でただ帰る道(新倉由美子)

・栄養も老廃物も量られてチューブに頼る媼の暮らし(村木幸子)

・ただいまの声なく家に上がり来し子のまなざしに灯はなくて(吉沢ゆう子)

・路地裏に少女のピアフはフォルテシモ マイクなどなく名前などなく(今井由美子)

・エンドロール終(つい)までくだりて席を立つかなりガタンと戻る日常(宇梶晶子)

|

« 近況いろいろ | トップページ | エイプリルフールです »

『塔』」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。