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2015年7月 7日 (火曜日)

塔2015年1~6月号掲載歌

<作品2>小林 幸子氏選 6月号

・しもつかれ鮭の頭や大豆など苦みばしりてあとを引きたり

・一瞬にトーク履歴の余すところなく消え去りて弥生吉日

・八景の水族館のイルカショーやはりおみなの調教師なり

・海月なら加茂水族館に数多見き父の笑顔も共に浮かびぬ

・海底のシロボシアカモエビの髭うす紫に華やいでおり

<作品2>池本 一郎氏選 5月号

・木々に満つ森のギャラリー訪ねんと見れば灰色倉庫の群れる

・菊蝶とう祖母の誇りの縫い紋の針の跡など裏地に円く

・出会いあり誘われたるリスボンにまた出会いあり化ける晩年

・プリンタも電子レンジも掃除機も交代したり恵方巻食ぶ

・きょうひとひさいごにことばかわせしは宅急便の人一昨日も

<作品2>江戸 雪氏選 4月号
 
・障子張り替えしイヴの日速足に赤坂見附より赤坂へ

・留守宅の草を除けばチューリップの芽の早出でており師走なり

・丹精のブロッコリーは柔らかく里芋ねばりねばり満ち足る

・賀状やめ寒中見舞いしたためる友と久方ぶりに向き合う

・娘の婚ののちに洗いしぬばたまの黒留め袖の傷みのあまた

<作品2>永田 淳氏選 3月号

・ぴしゃぴしゃと音のする方眺むれば水場に猫の顔の沈みぬ

・大き匙のごときお玉の具合よし 後ろ姿に時満ちており

・神戸から祖父母の住まう京都への車窓より見し菜の花蓮華

・ラッピングバスというらし乗り込めばいつも通りのコースを走る

・運転と配り役なる二人組サンタのおわすバスの走りぬ

<作品2>三井 修氏選 2月号

・妹のふくよかにしてコロコロとわれと同じのモカマタリ飲む

・病院の帰り道にて母からの本を少女は畑へ放る

・はたはたとはためいていた雨戸より雨の入りくる寝ようとすれば

・妹から引きこもりたる息子へと葉書の届く京都へおいで
 
・姉として母として吾はうわべのみ優しい実は疎んじている

<作品2>栗木 京子氏選 1月号

・ストローの如き茎もつ青き菜を炒めてみたりナンプラーにて

・煙る草絶ちて十日目ラーメンの列に並びぬ味噌味にする

・彼岸花あちこちに咲き左上奥の歯抜かる秋分の前

・恐らくは四代目なる鍋であるイワシの骨の口にほどける

・人のいぬ家を去るときポツポツとソーラーライト点り始める

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