塔2015年1~6月号掲載歌
<作品2>小林 幸子氏選 6月号
・しもつかれ鮭の頭や大豆など苦みばしりてあとを引きたり
・一瞬にトーク履歴の余すところなく消え去りて弥生吉日
・八景の水族館のイルカショーやはりおみなの調教師なり
・海月なら加茂水族館に数多見き父の笑顔も共に浮かびぬ
・海底のシロボシアカモエビの髭うす紫に華やいでおり
<作品2>池本 一郎氏選 5月号
・木々に満つ森のギャラリー訪ねんと見れば灰色倉庫の群れる
・菊蝶とう祖母の誇りの縫い紋の針の跡など裏地に円く
・出会いあり誘われたるリスボンにまた出会いあり化ける晩年
・プリンタも電子レンジも掃除機も交代したり恵方巻食ぶ
・きょうひとひさいごにことばかわせしは宅急便の人一昨日も
<作品2>江戸 雪氏選 4月号
・障子張り替えしイヴの日速足に赤坂見附より赤坂へ
・留守宅の草を除けばチューリップの芽の早出でており師走なり
・丹精のブロッコリーは柔らかく里芋ねばりねばり満ち足る
・賀状やめ寒中見舞いしたためる友と久方ぶりに向き合う
・娘の婚ののちに洗いしぬばたまの黒留め袖の傷みのあまた
<作品2>永田 淳氏選 3月号
・ぴしゃぴしゃと音のする方眺むれば水場に猫の顔の沈みぬ
・大き匙のごときお玉の具合よし 後ろ姿に時満ちており
・神戸から祖父母の住まう京都への車窓より見し菜の花蓮華
・ラッピングバスというらし乗り込めばいつも通りのコースを走る
・運転と配り役なる二人組サンタのおわすバスの走りぬ
<作品2>三井 修氏選 2月号
・妹のふくよかにしてコロコロとわれと同じのモカマタリ飲む
・病院の帰り道にて母からの本を少女は畑へ放る
・はたはたとはためいていた雨戸より雨の入りくる寝ようとすれば
・妹から引きこもりたる息子へと葉書の届く京都へおいで
・姉として母として吾はうわべのみ優しい実は疎んじている
<作品2>栗木 京子氏選 1月号
・ストローの如き茎もつ青き菜を炒めてみたりナンプラーにて
・煙る草絶ちて十日目ラーメンの列に並びぬ味噌味にする
・彼岸花あちこちに咲き左上奥の歯抜かる秋分の前
・恐らくは四代目なる鍋であるイワシの骨の口にほどける
・人のいぬ家を去るときポツポツとソーラーライト点り始める
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