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2017年7月

2017年7月25日 (火曜日)

塔2017年7月号~5月号掲載歌

塔2017年7月号掲載歌

<作品2>山下 洋氏選

・蚕より吐き出されたる絹糸の編まれて胴に寄り添いくるる

・肌につくすべてを綿に変えてみる化繊の衣なお捨てがたし

・特発性固定蕁麻疹つまりその出れば消えたりしないわけなり

・左手を白布に吊るし告別の写真に並ぶ外は初夏


塔2017年6月号掲載歌

<作品2>池本 一郎氏選

・代替わりせし写真館先代の笑顔の消えて温度の下がる

・証明用写真のために眼鏡脱ぎ年相応の我の露出す

・痛みではなく痒みではあるものの春の眠りの小間切れとなる

・蕁麻とう草に触れたる皮膚に似てミミズや島の形に赤く

・血の流れ良くする薬の欠かせない身体なりけり致しかたなし


塔2017年5月号掲載歌

<作品2>永田 淳氏選

・家内にコツコツコツと母の杖音の響きて我を迎える

・母方の祖父の缶もて焼きしとうテッポウムシはいかなる味よ

・植物園勤めの従姉妹と約したり テッポウムシを食む必ずや

・夕闇の塀の上行く尾の長き獣ふりむく嗚呼ハクビシン

・目の前の地面に降りしハクビシンするりベランダ下へ潜りぬ

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塔2017年4月号~2016年12月号掲載歌

塔2017年4月号掲載歌

<作品2>花山 多佳子氏選

・自らを追いつめている自らはいないかなどと医師のほほえむ

・あの人に呼びかけるなら言うだろう葱を背負ったリュックのあなた

・行きつけのスーパーに柚子きれており晦日の宵に一駅歩く

・ノルウェーに始まる長き名の猫を捕えたネズミトリモチである

・一月の三日に義母の亡くなりてとぎれとぎれの夫(つま)の挨拶


塔2017年3月号掲載歌

<作品2>江戸 雪氏選

・足元に金平糖の零れたる如く咲きおりヒメツルソバは

・六甲の湧き水のそばくきやかに境界を見せ芹とクレソン

・よき加減の色艶大きさもともとはカフスボタンの真珠のピアス

・尾のながい狸のようで面長の 男の語る闇の一匹

・白線の面に浮きたる獣の闇の通路に前足を置く


塔2017年2月号掲載歌

<作品2>三井 修氏選

・右の目の涙目となり後ろより点す目尻より点す

・アメリカンショートヘアなり青ときに緑色せる目に液おとす

・白色に緑の線の立ち上がるチューリップ咲くとう球根よ

・コーラスのあとのランチはパスタ組回転寿司の組に分かれる

・名画座のトイレに一輪紫のコスモスのあり蕾も一つ

・エコバッグ決して持たざる夫らを肴にしおり二十六階


12月号 山下 洋氏選歌欄評 清水 弘子氏にて

・湯の中にむかいあいたり一つずつタオル風船浮かばせながら

を取り上げていただきました。うれしいです。 


塔2017年1月号掲載歌

<作品2>小林 幸子氏選

・赤い靴の哀調帯びしメロディーを孫と私は受話器へ歌う

・七つの子母は歌いて曾女孫と会えないけれど歌の行き交う

・若狭湾の遊覧船の甲板に母も私も髪の踊りぬ


塔2016年12月号掲載歌

<作品2>山下 洋氏選

・黒点ゆプロミネンスの現れるDVDに見いるおみなご

・ひさびさの帰国の女孫六つにてばあばわれとの湯あみをせがむ

・湯の中にむかいあいたり一つずつタオル風船浮かばせながら

・煮詰まりてなんでやねんとつぶやけば良い加減なり東京におり

・舞鶴の記念館なりモスクワに父の居し州タンボフ近し

・生前に父の訪(おとな)い今ここに母と私の遭う捕虜たちよ

・母の庭に黄花コスモスあまた咲き蝶の飛び交う幾種類もの

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