塔2017年7月号~5月号掲載歌
塔2017年7月号掲載歌
<作品2>山下 洋氏選
・蚕より吐き出されたる絹糸の編まれて胴に寄り添いくるる
・肌につくすべてを綿に変えてみる化繊の衣なお捨てがたし
・特発性固定蕁麻疹つまりその出れば消えたりしないわけなり
・左手を白布に吊るし告別の写真に並ぶ外は初夏
塔2017年6月号掲載歌
<作品2>池本 一郎氏選
・代替わりせし写真館先代の笑顔の消えて温度の下がる
・証明用写真のために眼鏡脱ぎ年相応の我の露出す
・痛みではなく痒みではあるものの春の眠りの小間切れとなる
・蕁麻とう草に触れたる皮膚に似てミミズや島の形に赤く
・血の流れ良くする薬の欠かせない身体なりけり致しかたなし
塔2017年5月号掲載歌
<作品2>永田 淳氏選
・家内にコツコツコツと母の杖音の響きて我を迎える
・母方の祖父の缶もて焼きしとうテッポウムシはいかなる味よ
・植物園勤めの従姉妹と約したり テッポウムシを食む必ずや
・夕闇の塀の上行く尾の長き獣ふりむく嗚呼ハクビシン
・目の前の地面に降りしハクビシンするりベランダ下へ潜りぬ
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