『塔』

2016年11月26日 (土曜日)

塔2016年11月号掲載歌

<作品2>栗木 京子氏選

・食べるのは遅い方なりゆっくりと歩み話せば呼吸も深い

・東京都合唱祭の夜の部の若きらの間に緊張しおり

・東鶴とう酒の名の合唱団おのこばかりのこくときれよし

・歩みだしそうな鶴など裾に飼う留袖の祖母お転婆なりき

・尋ねれば関西弁の返りきて我も関西弁にて返す

四首目を編集後記にて取り上げていただきました。
ありがとうございます。

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2016年9月14日 (水曜日)

塔2016年8~5月号掲載歌

塔2016年8月号掲載歌

<作品2>池本 一郎氏選

・葉の間に小さき青梅あまた見ゆ やはり梅なり桃にはあらず

・面接でなくハイキング バーベキューあり とある企業の企み楽し

・初めてのアデノウィルスに攻められて熱の上がるよ銀杏は若葉

・テヘランにアメーバ赤痢患えば風土病とて投薬のなし

・八度だいは薬の効きてよく朝に六度なれども嗅覚失せぬ


塔2016年7月号掲載歌

<作品2>真中 朋久氏選

・この闇に下高井戸の闇におり今日のシネマは悪夢なりけり

・複雑な鍵にてコピーではなくて番号に添い新たに生まる

・植木鉢の窪みの下へ隠したり人に預ける習いのありき

・葉桜の葉のみとなりて天井ゆ滴受けつつ蒸されておりぬ

・名も知らぬ人に紛れて湯浴みする流れ流れよ新緑の憂さ


塔2016年6月号掲載歌

<作品2>三井 修氏選

・煙突の消えて久しき白山湯行かずじまいの最寄りの湯なり

・初めての岩盤浴はうつ伏してまた仰向きに汗の滴る

・身近にもテレビにも見ぬ煙草吸う人あまたおり映画を見れば

・新婚の素朴なる家具好む吾へ華麗なる家具送りし義母よ


塔2016年5月号掲載歌

<作品2>小林 幸子氏選

・縦長の箱型したるカメラなり見上げるように人を捉える

・二眼レフを上から覗きこみながらマイヤーの獲る路上の人ら

・山芋は山のうなぎというと知りそばはとろろと決めて食みおり

・こんにゃくを芋から作る話など成田にて聴く娘の舅より

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2016年5月 1日 (日曜日)

塔2016年4、3月号掲載歌

塔2016年4月号掲載歌

<作品2>江戸 雪氏選

・ペンダントヘッドの小さき海亀は鎖を千切り大き海へと

・笑わずに笑い袋を売らんとす「さよなら、人類」席にまどろむ

・北側の更地に家の建つという五月のことを母は気にする

・仲良しのご近所さんや建築士の従妹も来たり詩吟を唸る

・サネカヅラの赤き実わたし境界を確かめるため脚立に乗りぬ


塔2016年3月号掲載歌

<作品2>前田 康子氏選

・盗みたる鶏とらえたる魚を焼き森から森へ少年の生く

・ユダヤ人故に手術の遅れたり腕一本の少年荒れる

・菊花酢の歯に弾みおり懐かしき香りのありて父はいまさず

・富士山の見えぬ座席に折り畳み式の杖など見せてもらいぬ

・二から一やはり一とて糖尿という病なり娘の婿の

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2016年3月 9日 (水曜日)

塔2016年2、1月号 2015年12月号掲載歌

塔2016年2月号掲載歌

<作品2>山下 洋氏選

・目尻より口の端より赤き血をしたたらせたる二人と隣る

・CATSにて見覚えのある猫二匹二本の足で立ちて語らう

・右膝の後ろ右胸下あたり疼く霜月口角上げる

・血圧の高き母には禁物のローズマリーに励まされおり

12月号 永田淳氏選歌欄評 池田行謙氏 にて
・泣きそうな気持ちのままに向かい合う強そうなわれ鏡の中の
を取り上げていただきました。ありがとうございます。


塔2016年1月号掲載歌

<作品2>栗木 京子氏選

・華やかな水族館の裏側に浄水管のあまた行き来す

・深大寺の人をもてなす蕎麦屋には枡酒を酌む人のちらほら

・深大寺に妹と蕎麦味わいて大吉をひく二人とも引く

・学生のころ混声に歌いたる「流浪の民」を女声に歌う

・歌いたい歌をできれば歌いたい一輪ひらく一人カラオケ


塔2015年12月号掲載歌

<作品2>永田 淳氏選

・ふうわりとおさなきころへもどりおりオシロイバナの青き香を吸う

・泣きそうな気持ちのままに向かい合う強そうなわれ鏡の中の

・制服のサロンケバヤのミニサイズまといてシンガポールゆ来たり

・体力の温存のため眠りますやるべきことは小さく丸め

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2015年11月19日 (木曜日)

塔2015年11月号掲載歌

<作品2>三井 修氏選

・小銭入れは一円五円十円を孕みしままに姿くらます

・大戸屋に席なく隣る居酒屋のわれら十四名を吸いこむ

・お隣の煙草屋さんに焼きそばを振る舞われしを今も喜ぶ

・お姉さんは大柄な人眼鏡かけ小学生の我へ笑まいき

・お隣も三人姉妹おじさんは妾宅にいたことを今聴く

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塔2015年10月号掲載歌

<作品2>花山 多佳子氏選

・岩苔さん花茂さんとう母と吾のその日出会いし人の姓なり

・ただひとひ検査入院した母の不在に父の不機嫌に遭う

・その席はお母さんの席 らしからぬ父の指摘にお尻を浮かす

・いっぱいになるまで母は回さない洗濯槽を指差す父よ

・母かえる渋面は溶けたちまちにいつもの父の笑顔あらわる

・ははそはの母をわたしは箸を持ち鍋に泳がす豚とレタスを

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塔2015年9月号掲載歌

<作品2>永田 和宏氏選

・麦飯と糠漬けありて満ち足りぬ三十回を唱えて食むも

・われのあと音を立てずにカゴもどす殿方のありいつもの我ぞ

・カウンセラーと名乗る人とて生身なりもう潮時か幾度も思う

・一階に豆のサラダを購えば皿とフォークを添えて二階へ

・焼き鳥の煙のぼうと吐き出され赤きネオンに照らしだされる

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塔2015年8月号掲載歌

<作品2> 前田 康子氏選
 
・失敗の続く日々にて修復も成りてゆくなりバラの香りす

・片付きてご飯並びぬ 荒れ果てしすみかに安き気配の流る

・どうしても食べたくてこのチョコレートパフェ食む幸に店は黄昏

・当日の装いまでを整えし伯母われなれど当日は消ゆ

・片や八重また片方は一重にて捨てられしバラ網に繁茂す

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2015年7月31日 (金曜日)

塔2015年7月号掲載歌

<作品2>山下 洋氏選

・ひとつきの逗留のためガス管にガスを通しにおのこの来たり

・預かりし猫を運びぬ 帰国せし娘(こ)らの家へと猫は帰りぬ

・ぬばたまのウォッカは甘くとろみ帯ぶ夫(つま)のもらいし北欧の液

・本棚に残されているウィスキーいただき始めました父上

・右首ゆ右手首へと痛み這うムスカリの花紫の見ゆ

・床の間に雛を飾りて床を敷く母の部屋なり立ち去りがたし


6月号 池本一郎氏選歌欄評 山口泰子氏 にて

・菊蝶とう祖母の誇りの縫い紋の針の跡など裏地に円く

を取り上げていただきました。ありがとうございます。

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2015年7月 7日 (火曜日)

塔2015年1~6月号掲載歌

<作品2>小林 幸子氏選 6月号

・しもつかれ鮭の頭や大豆など苦みばしりてあとを引きたり

・一瞬にトーク履歴の余すところなく消え去りて弥生吉日

・八景の水族館のイルカショーやはりおみなの調教師なり

・海月なら加茂水族館に数多見き父の笑顔も共に浮かびぬ

・海底のシロボシアカモエビの髭うす紫に華やいでおり

<作品2>池本 一郎氏選 5月号

・木々に満つ森のギャラリー訪ねんと見れば灰色倉庫の群れる

・菊蝶とう祖母の誇りの縫い紋の針の跡など裏地に円く

・出会いあり誘われたるリスボンにまた出会いあり化ける晩年

・プリンタも電子レンジも掃除機も交代したり恵方巻食ぶ

・きょうひとひさいごにことばかわせしは宅急便の人一昨日も

<作品2>江戸 雪氏選 4月号
 
・障子張り替えしイヴの日速足に赤坂見附より赤坂へ

・留守宅の草を除けばチューリップの芽の早出でており師走なり

・丹精のブロッコリーは柔らかく里芋ねばりねばり満ち足る

・賀状やめ寒中見舞いしたためる友と久方ぶりに向き合う

・娘の婚ののちに洗いしぬばたまの黒留め袖の傷みのあまた

<作品2>永田 淳氏選 3月号

・ぴしゃぴしゃと音のする方眺むれば水場に猫の顔の沈みぬ

・大き匙のごときお玉の具合よし 後ろ姿に時満ちており

・神戸から祖父母の住まう京都への車窓より見し菜の花蓮華

・ラッピングバスというらし乗り込めばいつも通りのコースを走る

・運転と配り役なる二人組サンタのおわすバスの走りぬ

<作品2>三井 修氏選 2月号

・妹のふくよかにしてコロコロとわれと同じのモカマタリ飲む

・病院の帰り道にて母からの本を少女は畑へ放る

・はたはたとはためいていた雨戸より雨の入りくる寝ようとすれば

・妹から引きこもりたる息子へと葉書の届く京都へおいで
 
・姉として母として吾はうわべのみ優しい実は疎んじている

<作品2>栗木 京子氏選 1月号

・ストローの如き茎もつ青き菜を炒めてみたりナンプラーにて

・煙る草絶ちて十日目ラーメンの列に並びぬ味噌味にする

・彼岸花あちこちに咲き左上奥の歯抜かる秋分の前

・恐らくは四代目なる鍋であるイワシの骨の口にほどける

・人のいぬ家を去るときポツポツとソーラーライト点り始める

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