『塔』◎

2016年11月26日 (土曜日)

塔2016年10月号掲載歌

<作品2>前田 康子氏選

・朝顔の苗二つほどこしらえて門前に置くお持ちください

・持ち帰る袋も添えし母の苗翌朝となり苗のみ消える

・早朝のトイレに母と遭遇す母もわたしも生きております

・一晩に水を吸い上げ茎のみのローズマリーは庭に立ちおり

・ぽっこりとおなかの丸く背も丸い母に代わりてズボンを試す
 
・胃ろうなる義母の大腿骨折れてどうしたものか夫の惑う

・赤き色映えしローストビーフなり父の亡きあと熟練したり

七首目を編集後記にて取り上げていただきました。
ありがとうございます。

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2016年9月14日 (水曜日)

塔2016年9月号掲載歌

<作品2>永田 淳氏選

・球根を掘り出しみれば痩せている葉のみに消えしチューリップなり

・一輪だけ咲きし画像をカードにす咲き乱れてはつまらぬバラよ

・抜け殻を取りおく人と言われたり服用中は捨てられずおり

・医師も吾もマスクしたまま語り合う春咲く月見草に声なし

・パッキンはユニットバスの肉体の一部にありき海越え届く

・パソコンへアップグレード迫りくるカウントダウン枇杷の実たわわ
 
・失いてにわかに寂しヌイグルミはりねずみから蛙に変える

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2012年5月17日 (木曜日)

塔2012年5月号掲載歌

〈作品2〉花山多佳子氏 選

・笹塚の観音通り商店街灯点しごろは子供に還る

・八百屋にて葬儀屋までの道を問う橋を渡りてその彼方なり

・夕闇に建つ二階屋に看板のあり黒々と佐藤葬祭

・壺用の鞄あがなう和寒(わっさむ)の夜空の色か鉄御納戸は

・わたくしは父の遺骨と京都より鶴岡までを共に参らん

・父も居き水族館の闇に見しフライドエッグジェリーは海月

[3月号 栗木京子選歌欄評 伊東文氏] にて

・秋風の吹く待ち時間そびえたつシマトネリコも我もそよぎぬ

を取り上げていただきました。ありがとうございます。

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2012年3月15日 (木曜日)

塔2012年3月号掲載歌

〈作品2〉栗木 京子氏 選◎8回目

・秋風の吹く待ち時間そびえたつシマトネリコも我もそよぎぬ

・点滴と小さき匙より満たされる父よあなたはこんなに痩せて

・ミトンをば外せば父は柵をもち身を持ち上げる細き身体を

・ベッドから赤子のわれは父を見きその父を見る死の床の上(へ)に

・父も居し病院の日々癒えし人身まかりし人映画のごとし

・出棺の挨拶をするさやさやと鼻すする音とどくたまゆら

・遺言にカメラのことはわたくしに任せるという明るき楷書

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2012年2月13日 (月曜日)

塔2012年2月号掲載歌

〈作品2〉花山多佳子氏 選◎7

・父の居ぬ庭の草ひく我が袖をヌスビトハギの種の飾るも

・点滴の管を外してしまうゆえ父の諸手にミトンはめらる

・ミトンにて包まれている右の手で酸素マスクを払う父なり

・息を引きとるというとき見守りぬ小さく吸いて小さく吐きて

・ようやくに家の布団に横たわる父に息なし風船葛

・遺影には帽子姿の父のおり聞こえてくるよ朗らかな声

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2012年1月19日 (木曜日)

塔2012年1月号掲載歌

〈作品2〉山下 洋氏 選◎6

・なめらかなヴィオロンの音は生理的湾曲のなき首の骨撫づ

・入院の父を見舞えぬ不調なりチンチンチンと鉦叩き鳴く

・病室に父は夢見る点滴と葡萄の汁に支えられつつ

・北海道弁の父へと京都弁にて問う母よ うんこさんなど

・深山産みょうがをゆがき甘酢へと放てばほのか色づきはじむ

・照明を生業とせしお向かいはリハビリいややいややいうたら

・入り口に近きベッドゆ去り際に声のかかりぬ気いつけてやと

・父の居る六人部屋にたちこめる京の言葉に揉みほぐさるる

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2011年10月18日 (火曜日)

塔2011年10月号掲載歌

〈作品2〉真中 朋久氏 選◎

・マグノリアの大き木のある入口ゆ芳香を背に吸いこまれゆく

・鼻腔を経脳下垂体腺腫なる腫れ物を取る手術なりけり

・手術まで数日を待つ夫なりマグノリアまで送りてくれる

・根元には泰山木と書かれおり蕾も花も白蝋のごと

・マグノリアとうオムニバス映画にて空より落ちる数多の蛙

・盲腸、胃、扁桃腺に十二脂腸 月は五つに桃一つなり

・入院の夫は人寄せしておりぬ見舞い客らのあいまみえたり

えー、京都での一週間の滞在ののち東京におります。
(なので、休むといいつつ、更新してみます)
また来月も10日ごろから約一週間滞在予定です。
父は、点滴とわずかな食べ物のみで横になっており、
点滴を外しそうになるので、両手にミトンをはめています。
コミュニケーションをとることは難しくなってきましたね。

で、採っていただいた・盲腸、胃...の歌ですが、
十二脂腸でなく十二指腸ですよね。となると、

・盲腸、胃、扁桃腺に十二指腸 月は四つに桃一つなり

となりますか。う~~む。すみません。

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2011年4月 9日 (土曜日)

塔2011年4月号掲載歌

〈作品2〉吉川 宏志氏 選◎

・日暮里ゆゆるゆる坂を登りきて友を見いだすぬばたまの闇

・月見寺の足元てらす灯火らの魂のごと蛇行しており

・ひさかたの光を浴びて秦琴と笙それぞれはおのこに添いぬ

・奏者らの背後の闇のあまたなる位牌も今宵客となるらむ

・赤き実を垂れハート型したる葉の構内に立つこれは飯桐

・そこここにパジャマ白衣の人のおりここは病気を思う建物

・循環器内科の四人部屋にいる四人の夫と妻われ一人

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2009年6月14日 (日曜日)

塔09年6月号掲載歌

<作品2>黒住嘉輝氏 選◎

・初めての品川駅へ降り立てばビルの谷間にみっちゃんとなる

・遥かなる遺伝子たちに乾杯す二十一年ぶりのいとこら

・ナイーヴな少年の棲むオジサンの饒舌を聴く「ですから」多し

・居酒屋の昼なお暗く六葉は光の粒のやけに大きい

・写真館の店主の曰くこの場合強制的に発光させよ

・ムードのある撮ろうとしても撮り得ない写真と父は評してくれぬ

・土手に身を屈めて枯葉被りたる蕗の薹ここかしこに摘みぬ

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2008年2月20日 (水曜日)

塔08年2月号掲載歌

<若葉集> 入会一年目の会員欄 栗木京子氏 選◎

・世田谷ののっぽの紅き五弁花が京都の母の写真にも咲く

・カメラにて捕えられたる紅蜀葵(こうしょっき)は自死せし叔母の手植えし炎

・映画にて殯(もがり)の森をさ迷えば雨は冷たく焚き火は温い

・溢れだしたりしないよう静静と花瓶の如くわが身を運ぶ

・あれきりになるのだろうな父といた鶴岡の世の菊花の小鉢

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